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長門有希 銀河を超えた戦い プロローグ ~宇宙を漂う宇宙船内部 青年「マスター地球です。」 マスター「そうか。ここにフォースを操る女性がいる」 青年「マスターそれはホントですか?」 マスター「確証はない。R2を先に一体送り込んだ。そろそろデータが送られてくるだろう」 ~その頃文芸部室 ホームルームが終わり、掃除当番と指導のあるハルヒを励ましてから俺は いつも通りに、SOS団アジトの文芸部室へと向かっていた。 コンコン・・・返事がない。朝比奈さんはいないみたいだ。 ガチャ キョン「長門だけか」 長門「・・・・・・見て」 突然のことに俺は驚いた。長門が手のひらを向けただけでリンゴが吸いよせられてきた。 古泉「おや、長門さん超能力ですか?」 お前いつきた。 長門「わたしは超能力者ではない。」 超能力者よりすごいぞと言うか迷ったが、ここは言うことが違う。 キョン「いつからそんな事できるようになったんだ?」 長門「あなたも知ってる通り、プログラムにアクセスすれば大抵のことはできる。」 それは、確かに知っている。長門なら一人で野球もできそうだ。 長門「でも、さっきのはプログラムにアクセスしていない。わたしの力」 なんだか長門が嬉しそうに、自分の手のひらを見ている。 バタン みくる「ふぇ~遅れてすいません。あれ?涼宮さんは?」 キョン「あいつは今日掃除の後個人面接です。5時30までに来なければ今日は解散でいいと」 みくる「そうなんですかぁ、もう25分ですし着替えなくてもいいですよね。」 キョン「いいと思いますよ。」 この人もまじめな人だ。毎日メイド服に着替え、帰る時は制服に着替える。 こんなめんどくさいことを、自分からしてるんだから大したもんである。 長門「・・・・・・見て」 めずらしく、長門が朝比奈さんを呼んだ。うれしそうである。 みくる「なんですかぁ?長門さん」 カエルの着ぐるみの頭の部分がロッカーの上にあるわけだが それが、長門が手を上から下に降るアクションをしただけで落ちたのだ。 みくる「ふぇっ、、、長門さん今何か力を使ったんですか?」 長門「使ってはいない。わたしに芽生えた力。」 みくる「・・・キョンくん」 キョン「俺もびっくりしましたよ。リンゴを吸い寄せましたから」 朝比奈さんは、俺がするだけでも驚いている。 古泉「超能力でもなく、思念体の力でもない。なんでしょうね?」 みくる「う~ん、不思議ですね。他に何かできるんですか?」 長門「朝、枕元に置いてあった。」 長門が俺たちに見せたのは、シルバーの短い筒と、長門にはでかすぎる茶色の布でできたかぶり物だった。 キョン「心当たりないのか?」 長門「・・・ない」 キョン「なにかわかるか?」 長門「・・・わからない。」 古泉が勝手にかぶり物をかぶっていた。背の高い古泉でもフードをすると顔が隠れる。 見た目はカッパのような感じだ。 古泉「とても、大きいですね。長門さんが着たら半分以上引きずりますね」 長門「・・・・サイズを調整する。貸して」 そういうと、長門はそれを着た。古泉の言ったとおり長門には半端なくでかい。 小さい子が親の服を着ているみたいな感じだ。かわいいぞ、長門。 長門「~~~~~~~~」長門が呪文を唱えると少し引きずる程度の大きさになった。 キョン「長門似合ってるな。いいぞ」 長門「そう。」コートのようにフードをかぶっている。 みくる「あのぉ、この筒ボタンが付いてますよぉ」 朝比奈さんは、ずっと筒を見ていた。 キョン「未来に似たような何かありますか?」 みくる「未来のものじゃないみたいです。あえて言えば、もっと古いもの…」 古泉「このようなものが昔に?」 みくる「はい、教科書で見たことがあるんです。」 朝比奈さんは、思い出しながら語るように話しだした。 「はるか昔、遠い銀河系の彼方で、ジェダイと呼ばれる騎士の集団があった。 彼らは、光の剣で戦い、光より早い乗り物で移動する・・・」 みくる「こんな感じのお話なんですが・・・」 キョン「朝比奈さん、それは実話ですか?」 みくる「多少実話も入っているかと…」 どうやら、ただのお話らしいな。それもそうだ、こんな話聞いたことがない。 もし事実なら、現代に少しくらいその陰があってもいいだろうよ。 古泉「このボタンなんでしょうね?」 長門「・・・朝は気付かなかった。押してみる。」 ビィィィン!ジリジリジリ さぁ、状況を説明してみようか。 長門がボタンを押した瞬間、筒から光の棒が伸びカエルの頭が乗っていたロッカーを貫通しているのだ。 キョン「なんだこれは!」 R-2「urukoowat-ed」 ~地球上を旋回中の宇宙船 青年「マスター、データが送られてきました。」 マスター「表示しろ」 青年「はい!」カチッ シュルーン そこには、長門・キョン・みくる・古泉が立体映像で映し出されていた。 会話内容は、先ほどの部室での会話である。 青年「このような少女がフォースを…?」 マスター「それより問題は、生まれつきではないフォースの力だ。」 青年「朝目覚めたら急に、だなんて・・・・」 マスター「彼女との接触を試みる。」 青年「了解しました!」 こうして、宇宙船は地球大気圏へと突入した ~文芸部室 長門「・・・ユニーク」 キョン「それどころじゃない!早くそれを消すんだ。」 古泉「触ってはだめです。貫通ですよ?しかも切り口が溶けている・・・」 長門「・・・しまう。」シュルル なんなんだ、この剣は。朝比奈さんが言った光の剣。もしや…! キョン「朝比奈さん!」 みくる「ふぁい?」 まったく気の抜けた返事をする人だ。だが、かわいらしい。 キョン「朝比奈さんの教科書で昔の事って、今のことじゃないですか?」 目をまん丸くして驚く朝比奈さん。 古泉「確かに、話がつながりますね。僕らは知らず、朝比奈さんが知っている昔の話。つまり今の話なんですよ。きっと」 みくる「どうしよう。ほんとなら私未来のこと話しちゃった。」 大丈夫です。あなたはえらくなって同じミスをまたします。 長門「…大丈夫。はっきりしたことではないから。」 みくる「だと、いいんですがぁ」 ふと、外を見るとすっかり暗くなっていた。 時刻は6時を回ったところ。ハルヒは今日は来なかった。 古泉「今日はもう帰りましょうか。」 みくる「そうですね、暗くなってきましたし」 キョン「長門、それはお前が家に保管しといてくれ。」 長門「わかった」 帰り道。4人で歩いてると、俺たちの前に二人の男が現れた。
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長門ふたり 第五章 長門を消去せよ! 「エージェント番号○×□□、朝比奈ミクル、定期レポートを提出し状況を報告しなさい」 「はい」 みくるは久しぶりに自分の時空に戻っていた。時間管理局でのレポートはいつも緊張する。 「今回提出したレポート番号○○にある通り、涼宮ハルヒには変調は見られません。 過去一ヶ月間に新たな時空の歪みを生成した痕跡もありません」 「よろしい、朝比奈みくる。ご苦労だった」 ほっと溜息をつくみくる。思えば、ここに出頭して「過去」でエージェントとなる 命令を初めて受けてから、既に1年以上の時間が経過していた。 最初は嫌だった。一人だけで、知る人もない世界に行き、自分の正体を明かすことも 許されない。心の内を打ち解けられる友人も、甘えられる恋人も作ることは許されない。孤独と 欺瞞に満ちた日々。ここに来る度に「任務解除」を申し渡されることを心密かに願ったものだ。 今も心密かに、ここに来る度に願うことがあるのは変わらない。もっとも、今では 「任務解除」を申し渡され「ない」ことを願っているのだが。 「みくる」 「はい」 「新しい任務を言い渡す」 「えっ」 「心配するな。お前が今の時間平面での任務継続を可能なかぎり長く続けたいと 思っていることはよく認識してる。新任務は、同じ時間平面での任務だ」 「はい、ありがとうございます」 「新任務は情報統合思念体の情報端末の破壊だ」 「はい」 「このデータカードに当該情報端末の情報が入っている。 確認してから破壊するように。破壊のための手順もデータカードに 記述されている。下がってよろしい」 「はい」 どうやら、みくるは情報統合思念体の情報端末の破壊という付加的な 任務を命じられたようだった。観察以外の任務を請け負うことは滅多に無かった。 「頑張らなきゃ」 自分がドジなのはよく認識している。自分がすることは観察ばかり。 規定事項と禁則事項の山。未来人なのに何も知らされない不合理。 そんな自分が時おり悲しくなる。そんなとき、SOS団のみんなとすごすと 本当にほっとする。正体を明かせないはずだったのに、今では自分の未来人という正体を 知りながら、それでいて仲間だと思ってくれる人間があの時間平面に3人もいるのだ。 古泉君、長門さん、キョン君。なるべく長く、今の任務を続けたい。そのためには この任務を確実にやりとげなくては。自分の情報端末にデータカードを差し込む (と言ってもキョンの時代の人間がみたら、名刺大の板を額にあてたようにしか 見えないだろう。この時代の情報端末は脳に内蔵である)。 ターゲット:ヒューマノイドインターフェース 長門の顔が思い浮かんだ。ちょっと気分が暗くなった。あんなのを破壊するのだ。 ちょっと見には人間と見分けがつかない。気分がいい仕事じゃ無いな。 でも、いくら見た目が人間でも所詮、ヒューマノイドインターフェースは死の概念 すら理解できない冷酷な機械に過ぎないのだ(長門さんは違うけど)。 躊躇してどうする、みくる頑張れ! 続けてデータを読み込み表示したみくるが脳内ディスプレイの中に見たのは 無表情な長門の顔だった。 「できません!」 みくるは泣きながら時間管理局に取って返した。 「なぜ、できない」 「長門さんは、長門さんは、大切な友人なんです」 「だから?」 「だから殺すことなんてできません」 「殺すのではない。破壊するのだ」 「同じことです」 「この任務を拒否すれば現在の任務も解除しなくてはならないが 構わないのか?」 任務の解除?じゃあ、もう二度とみんなに会えない。 「こ、困ります」 「それでは、ヒューマノイドインターフェースの破壊を遂行するのだな?」 「そ、それは」 みくるの目から涙があふれ出た。長門有希を殺すか、このまま一生みんなにあえないか、 どちらかを選ぶしか無いのだ。答えは決まっていた。 「任務を解除して下さい...」 みんなの顔が思い浮かんだ。キョン君、長門さん、涼宮さん、古泉くん、鶴屋さん。もう二度と 会えない。お別れも言えなくてごめんなさい。 「朝比奈みくる」 「は、はい」 「お前は解ってないようだな」 「何が、ですか?」 「お前が辞退しても当該ヒューマノイドインターフェースは別の時間監視員の手で 破壊されるのだぞ。お前にその任務を与えたのはせめてもの情けだと言うことが解らないのか?」 「ど、どういうことでしょう?」 「お前以外のものがこの任務遂行を命じられていたらどうなるかよく考えてみることだ」 談笑するSOS団員。ふいに襲い来る影。倒れる長門有希。呆然と立ち尽くすみくる。 私が拒否しても何も変わらないんだ...。みくるは自分の無力さを噛みしめていた。 「わ、わかりました。任務を遂行します」 「よろしい。では行きたまえ」 長門有希の破壊は規定事項なのだ。自分にどうこうできることではない。 だったら、せめて、自分の手で。少しでも長門さんが苦しまない方法で....。 時間管理局から渡されたデータカードに入っていたヒューマノイドインターフェースの 破壊方法は拍子抜けする程簡単だった。データカードには粉末ウィルスの作成法が 記されていた。これをお茶に入れて飲ませる。ただそれだけ。ウィルスは人間には全く無害。 ヒューマノイドインターフェイスにとっては致命的。摂取後、1秒でウィルスはインターフェースの 情報中枢を破壊する。それでおしまい。SOS団所属メイドであるみくるにとっては この上なく容易な長門有希破壊方法だった。 次の日、みくるは早めに部室に行くとお茶の用意をし、準備してきた粉末ウィルスを お茶に溶かした。味も匂いも全く無い。長門有希が入って来る。すかさず、お茶を だす、みくる。 「大丈夫?」 「え、どうしてですか?」 「あなたの脳波がはげしく乱れている。不安感の印」 「なんでもないですー。ちょっと夜更ししたんです、昨夜。 さ、お茶を飲んで下さい」 長門は黙って湯飲みを手に取るとぐいっと... 飲まなかった。そのまま湯飲みを机においた。 「朝比奈みくる」 「は、はい!」 「本当のことを話して」 「本当のことって」 「なぜ、あなたはそんなに不安感に苛まれているのか。理由があるはず」 「そ、それは」 「話して。真実を」 もう限界だった。 「ご、ごめんなさい。長門さん。わたしはあなたを「殺そうと」したんです」 「そう」 長門は本を開くと続けて読みはじめた。 「あのっ、怒らないんですか?」 「あなたは悪くない。悪いのはあなたにこの任務を与えた人間。 あなたを怒っても無意味」 「そ、それはそうですが」 「とにかく、話して、全部」 その日の部活が終わるとあたし達は長門さんのマンションに集合した。涼宮さんの 前で放せる話題ではなかったからだ。そこでキョン君達が聞かされたのは驚天動地の 真実だった。 「朝比奈さんが長門さんを殺すのを拒否するとどうなるんですか」 「わたしの任務は解除され、より強力なエージェントが送り込まれてきます。 今度は私のように観察が主たる任務のエージェントではありません。 実働部隊としてありとあらゆる特殊任務を遂行するように高度の訓練を 受けたエージェントです」 「そいつらは長門に勝てるんですか?」 「わかりません。でも、彼らにはいろいろな能力が与えられているはずです。 勿論、申請無しで時間移動する権限も与えられています。 たやすい相手ではないと思います」 「あなたは失敗したと報告すべき」 「でも、そうなったら、わたしは任務を解除されます」 「されない」 「されないにしても新しいエージェントが...」 「構わない」 「わたし『たち』は消去されない。大丈夫。信じて」 「わかりました。言う通りにします」 「明日、粉末ウィルスをもう一度飲ませて。いまからワクチンを 作成するのでわたしには効かなくなる。あなたはただ ウィルスを飲ませて失敗したとだけ報告して」 「はい」 翌日。お茶の中に粉末を溶かし、みんなに出す。 何も知らない涼宮さんは勿論、ぐいっと飲み干す。 古泉くんとキョン君もゆっくりと飲み干す。 いよいよ長門さんの番。手が震える。今にもお茶をこぼしそう。 お盆がかたかたなってしまう。もし、ワクチンが効かなかったら? 長門さんが「死んで」しまったら? 「大丈夫。信じて」 長門さんはお茶を飲んだ。それから永遠と終われる程長い一秒が経過した...。 長門さんは静かに茶碗を置いた。 みくるは跳び上がって喜ぶのをなんとかこらえなくてはならなかった。 「状況を報告せよ」 「失敗です。粉末ウィルスを摂取させましたが効果ありませんでした」 「そうか。さすがに簡単にはいかないようだな」 「はい」 「さがってよろしい」 「は?」 「任務に戻りなさい」 「ですが、わたしは失敗を」 「朝比奈みくる。君の本来の任務は涼宮ハルヒの観察だ。 その点に関しては今の君の当該時空での立場は余人をもって代え難い。 今回の任務の失敗は大きな問題ではない。君は指令通り任務を果たした。 失敗したのは君ではない。ウィルスだ。下がってよろしい」 みくるは驚いていた。てっきり、これで終わりだと思っていたのだ。 だが、長門さんは正しかった。彼女は私が任務解除されないことを知っていたのだ。 部室で長門と二人っきりになった時、みくるは長門にこっそり告げた。 「ウィルスは効かなかったと報告しました」 「そう」 「新手のエージェントが来ます。わたしとは比べ物にならない凄腕が」 「大丈夫。まかせて」 本当に大丈夫なのだろうか?みくるは不安だった。 長門しかいない文芸部室。しずかにページをめくる長門。 ふいに、時空の乱れを感じて顔をあげると目の前には 不敵な笑いを浮かべた男性が一人。手には奇妙な装置を 持っている。 「あなたは誰?」 「おまえが知る必要は無い。なぜならこれから...」 「あなたが死ぬから」 突然、後ろから声をかけられて男は驚愕して振り返った。 そしてもっと驚くことになった。そこにも長門有希が立っていた。 「な、何?」 「さようなら」 さすがの手練のエージェントにも一瞬のスキが生じた。 いうまでもなく、この「一瞬」は長門にとっては無限の時間が与えられたのとあまり 変わらなかった。二人の長門が呪文をつぶやく。 「★◯◎×αβγ□...」 男の胸に小さな黒い点が出現したかと思うと、男は悲鳴をあげる間もなく 黒い点に吸い込まれてかき消えるように消滅してしまった。 ドアが開き、キョン、みくる、古泉が入って来た。 「すごいですね。長門さん」 「なにやったんだ、長門?」 「彼の体内にマイクロブラックホールを作成した」 「ヒュー」 「すごいですね、長門さん」 ああ、長門さんが敵じゃなくて本当に良かった。 自分が長門さんに粉末ウィルス入のお茶を手渡した時、 長門さんは「本当のことを話して」と言う代わりに 今、時間エージェントに目の前でやってのけたことをわたしにしても よかったのだから。 ...... ... レポート○×□□-1379 結果:失敗。 経過:当該時空の観察要員に当該ヒューマノイドインターフェイスの消去を 指示するも失敗。ついで実行要員を三度に渡って派遣するも失敗。 分析:当該任務の失敗理由は不明。任務の重要度と人的損失の軽重をはかりにかけ、 当該任務は遂行を中断し、無期延期とする.... 朝比奈さん(大)はレポートを読み終わると情報端末のスイッチを切った。 もっとも、「端末」とは言っても実際には自分の脳内に設定された情報 機能に過ぎない。キョンの時代の人間が見たら、朝比奈さん(大)が瞬きしてから ちょっと微笑んだようにしか見えないだろう。あの時はなぜ、長門さんを消さなくては いけないのか、それがどれくらい重要なことなのか全然、わからなかった。 ただ、任務と友情の板ばさみになって苦しんだだけだった。今は、未来人 (自分をこう考えるのは奇妙だったが、長い間キョン達と暮らすうちにそう 考えるようになっていた)がなぜ長門を消そうとしたのか、それがどの程度 重要なことだったのか、よく解る。あの時、今の知識があればあんなに苦しむことも なかっただろう。でもそれはそれ。あの時はあの時。結局、自分は長門さんを助けたのではなく 自分自身を、あの時空にいることができる自分を救ったのだった。 これからキョン君に会いにいく。彼があたしと会うのは初めて。でも、何も教えてあげられない。 白雪姫としか。でも、頑張ってねキョン君。あなたならきっと乗り切れるわ。 これから起きることを。全て。だって、あの時、わたしがあなたちと過ごした 時間平面であなたは立派に全てをやり遂げたのだから。 第六章
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- 長門ーーーーー!!! いきなりの新作です いつもは予告しておきながら 延々と発表を先延ばしすることに定評のある俺ですが たまにこういうことをするので、ご注意下さい。 そして、前まで予告していた新作の件を うやむやにしようとする俺テラ悪ス。 まぁ…大丈夫です。そっちも何とかします。 え~…そして。この動画のラストを見ていただければ分かるのですが 重大発表がございます。 その件につきましては、また後々に追って情報を発信しますので 続報をお待ち下さい。 戻る コメント 12月まで待ち切れね~ -- サーモン (2009-10-25 20 03 24) MUSHOKLUTIONの職歴の後にゴスペラーズの替え歌があったぞwwwww -- オンドゥル (2009-10-26 13 53 38) 名前 コメント
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五 章 Illustration どこここ 長門は布団から出て立ち上がった。俺は長門の腕を抑えた。 「まだ寝てたほうがいいぞ。あれだけのケガだ」 「……大丈夫、八十パーセント程度は回復した。今は急を要する」 長門はダッフルコートをまとった。大丈夫じゃなさそうだぞ、足元がまだふらついているし。 「なにをするんだ?」 「……向こうからの次元転移を阻止する」 そんなことが可能なのだろうか。某猫型ロボットの空間転移ドアの出現先を封じ込めるようなものだ。喜緑さんと朝倉も立ち上がった。 「広い場所が必要ですわね」 「わたしも手伝うわ。もう、向こうには戻れないから」 このあたりで広い場所といえば、中学校のグラウンドがいちばん近い。でもあそこまで長門に歩いていかせるのは体に障るだろう。それに高校生がこんな夜中にうろうろしていてはあやしまれる。俺は谷川氏に同伴してもらえないか尋ねた。 「有希ちゃんの具合はどう」 「まだふらついてますが、なんとか回復したみたいです」 「そりゃよかった」 血にまみれるほどの大ケガをしてたなんてとても言えなかった。 「谷川さん、お手数なんですがちょっと車出していただけませんか」 「いいよ。どこ行くの?」 「中学校のグラウンドまでお願いしたんですが」 「いいけど。中に入るの?」 「ええ。広い場所がいるとかで」 「警備会社に見つからないようにしてね」 谷川氏はニヤリと笑った。俺たちが広い場所でやることといえばそう多くない。宇宙にメッセージを送るとか、次元転移するとかだ。 五分くらいして中学校に着いた。正門から入るのははばかられたので、脇のほうにまわってもらった。 「もしものときのために、僕はここで待機しておくよ。エンジンかけっぱなしにしておくから」 「そうですか、お手数かけます。じゃあ早速行ってきます」 朝倉が壁をよじ登って忍び込み、内側から門を開けてくれた。あいつ、錠前のカギなんかどこで手に入れたんだろう。朝倉の手元を見ると曲がった安全ピンがあった。ピッキングですかそれ。 人目がないことを確かめて忍び込み、グラウンドに向かった。三人は協力して大きな絵文字を描いた。俺は長門に言われるままに生石灰のラインカートを引き、長さ五十メートルくらいの記号を一文字描いた。俺とハルヒが描いたのとはだいぶ違う気がするが。 それから三人は絵文字の上に立った。互いに三十メートルくらい離れ、正三角形の頂点にそれぞれがいる。やがてタイミングを合わせたように同時に右手を上げた。俺から近い位置にいる長門の詠唱だけが聞こえた。三人の右手から、地表に沿って緑色のレーザーのようなものがまっすぐに伸びた。正三角形の中心で交差している。それから三人の腕が少しずつ角度を上げてゆき、緑色の光はピラミッド状に持ち上がった。レーザーは三角錐の頂点で交差している。そしてその三角錐のてっぺんに緑色の球が現れた。球体は一気に膨らんで光を拡散し、地面も建物も、そこにいた俺も突き抜けて空間を走り抜けた。 それで作業は終わったらしく、二人が長門のところへ戻ってきた。 「済んだのか」 「……終わった。百五十パーセク程度はこのシールドで守られる」 それがどれくらいの距離なのか俺には見当もつかないが。長門が言うには、こっちの場所を隠蔽したのでいきなり現れることはできないだろうということだった。 俺たちはお屋敷に戻った。古泉が門の前で待っていて出迎えた。 「順調にいきましたか。こちらからも緑色の光が見えましたが」 「ああ。この三人が地球を守ってくれてる」 長門がふいに空を見上げた。喜緑さんと朝倉も同じように宙を見つめた。 「……彼らが転移しようとしている」 夜空に、白く光る線が流れて弧を描き、現れては消え、また現れては消える。 「こっちの位相情報を探っているんだわ」 いくつもの流れる白い線は、まるで闇の中からこっちの様子をうかがっているようだった。その線の先の、見えない向こう側の世界にあいつらがいるのだということを考えると背筋が寒くなった。 「あれ、なにかしら」 後ろで声がした。しまった、ハルヒに見られた。いやいや、ハルヒどころではないぞ。西宮市民、いや兵庫県民がこれを見ているだろう。昨日ハルヒが神人を出して以来、西宮市は超常現象研究家のスポットになっちまってる。明日の新聞には記事が載り、ワイドショーでは占い師やら天文学者やら物理学者やらがそれっぽい説を並べ立てるにちがいない。いっそのこと県民全員の記憶を抹消してしまうか。などと考えていると古泉がそれっぽい理由を述べた。 「ふたご座の流星雨でしょう。今がちょうど時期ですから」 「へえ、古泉君って天文詳しいんだ」 古泉は、これは本当ですというふうに片目をつぶって見せた。ふたご……か、これは何かの偶然なのか。 しばらく見ていたが白い線の発生は止まらない。俺はαの姿を思い出して不安にかられた。 「大丈夫なんだろうな」 長門だけに聞こえるように言った。 「……この宙域の位相情報を暗号化した。座標を認識できなければ、転移も無理」 じっと見守っていた喜緑さんもうなずいた。どうやら成功したのか。 「これがどれくらい持つかしら」朝倉が不安そうな表情を浮かべた。 「……シールドの外に転移して、空間移動でこちらに接近するまでの時間」 「それまで、あまり長くはなさそうですわ」 「……二十四時間体勢で、監視に入る」 「分かりましたわ。適度な時間で交代しましょう」 こういうとき俺ができることといえば、黙って彼女たちの邪魔をしないことくらいか。なんて自分の無力さを感じていると、朝倉が声をかけた。 「キョン君、心配しないで。あとのことはわたしたちに任せて」 夜中に目が覚め、俺は布団を抜け出した。寝息を立てている古泉を起こさないように、そっと部屋を出た。吐く息が白い。俺は台所でコーヒーを入れて離れに向かった。女の子が寝ている部屋にこっそり忍び込むなんて、見るからに不謹慎なことを考えているようだが、この切迫した状況はそれどころではなかった。 軽くノックして引き戸を開けてみるが、中に長門はいなかった。ハルヒが大口を開けて眠っている。喜緑さんが起き上がった。 「長門はどこですか……」 「縁側にいますわ」喜緑さんは廊下を指差した。 長門はパジャマの上からダッフルコートを着たまま、縁側に座っていた。じっと何かを待つように動かない。俺の気配を感じたのか、少しだけフードが揺れた。 「長門、寒いだろ」 「……ありがとう」 湯気の立つコーヒーを差し出すと、両手で包むように受け取った。カップを渡すとき少しだけ触れた指先が冷たかった。俺は長門の隣に座り、持って来た毛布を肩にかけてやった。なんとなく沸いたもやもやした気持ちのせいで、そのまま肩を抱き寄せてみようかと思ったりした。ハルヒにそんなところを見られたら庭にある水温四度の池に放り込まれかねないんでやめといた。 廊下に人影が見えた。朝倉が起きてきたようだ。そろそろ交代の時間か。 「長門さん、あれ見える?」 朝倉が天を指差した。長門は夜空の一点を凝視した。 「……二百四十光年のところまで来た」 「じゃあ、到着するのは二百四十年後か」 「……おそらくあと数時間。彼らはタキオンフィールドを使っている」 ええとつまり。 「光速を超えているってこと」朝倉が補足した。 「接近されたら防御できるのか?」 「……分からない。相手の数による」 「ここでの惨事は避けたいわ」 「……」 長門は考え込んでいるようだった。この世界で思念体同士の戦争が起こったら、俺たちの世界も消滅しかねない。 「長門さん。なにか変化があったら起こすから、休んでて」 「……分かった」 長門はゆっくりと立ち上がり、毛布を朝倉に渡した。廊下を歩いていくダッフルコートを被った背中が、なにかを思いつめているようで俺は不安を感じた。長門は離れに入る前に、一度だけ振り返って俺を見た。 「……」 フードの下からかすかに長門の瞳が見えた。だが何も言わなかった。 俺もそのまま部屋に引き上げようとした。 「寝るの?」 「ああ。今日は疲れたからな」 「そう。おやすみなさい」 自分でも、あからさまにそっけない態度だとは分かっていた。朝倉にはなんとなく近寄りがたいものがある。朝倉の顔を見ると、それが谷口的AAランクプラスの笑顔だろうがなんだろうが、どうしても頭に鋭利なナイフが浮かんでしまう。一種のトラウマかもしれない。この朝倉とは関係ないんだが。 俺はふと台所に寄って、空いてるカップにコーヒーを注いだ。 「朝倉、寒いだろ」 「あら、気が利くのね」 自分でもなぜこんなまねをするのか分からないが、朝倉にコーヒーを渡した。 「俺たちの朝倉の話、聞いたか」 「ええ。あなたを殺そうとしたんですってね」 「ああ」 「ごめんね……」 「いいんだ。お前が悪いわけじゃないし」 二人とも黙り込んだ。それ以上話が続かなかった。 「αってどんなやつなんだ?」 「そうね。人間的に言えば、好奇心旺盛で向こう見ずってところかしら」 「長門とは逆だな」 好奇心はあるのかもしれないが、石橋を叩いて渡るほうだろう。 「むかし次元断層に飛び込んだって話も、その性格のせいかもね」 「無茶なやつだ。かっこつけすぎたんだろう」 「そうね。αはずっとみんなに頼られる存在だった。誰かに助けを求めるってことがなかったわ」 「だろうな。自己主張が強すぎると思う」 朝倉は立ち上る湯気の向こうから、じっと俺を見つめた。 「長門さんは頼れる人を見つけたみたいね」 誰のことだろう。谷川氏のことかな。俺もあの人は頼りがいがあると思うが。 「キョン君、起きて、長門さんを止めて」 夜が明ける前、喜緑さんが血相を変えてやってきた。俺はやっと眠りにつけたところを起こされ、目をこすりこすり起き上がった。 「長門がなにかやらかしましたか……」 「彼女とひとりで戦うつもりなの」 俺は上着を着て離れに向かった。長門の様子がいつもと違う。最初に会った頃のように無表情だった。これは表情がないのではなくて、感情を押し殺しているんだと気が付いた。 「長門、なにをするつもりだ」 長門は俺の目を見なかった。固い決意がゆらぐのを恐れるように、自分のまわりに見えない柵をめぐらしているようだった。 「……彼女と、対決する」 「ひとりで戦えるのか」 「……わたしならαを止められる」 「勝算はあるのか」 「……説得に応じなければ戦う。最悪でも対消滅する」 「対消滅ってなんだ?」 「わたしと彼女は同じエネルギーから生まれた、粒子と反粒子のようなもの。わたしたちは互いに逆向きの力を持っている。衝突させれば、ゼロに戻る」 「長門さん、あなた死ぬ気なの!?」 朝倉が叫んだ。俺は震える手で長門の肩を握り締めた。 「長門、頼むから死ぬなんて言うな。俺が生きてるうちは、言うな」 「わたしの使命は、あなたと涼宮ハルヒの保全。そのためなら手段を選ばない」 「じゃあ俺も連れて行け」 「……それはできない。負ければ、死ぬ」 「たとえそうでも、俺はお前をひとりにしたりしない」 俺は長門の手を握った。 「俺は約束を守るぞ」 長門が暴走した日、俺が病院のベットで約束したことを忘れてはいまい。そして二ヶ月前、俺はこいつを散々探しまわったあげくに見つけ出し、もうひとりにはしないと誓ったのだ。 長門は喜緑さんを見て、それから俺を見た。 「……分かった」 長門はうなずいた。 「わたしも同行しますわ」喜緑さんが言った。 「……彼女には、あなたの保護を頼む」 もしや、俺が無理についていくといったばっかりに喜緑さんを巻き込んでしまうのか。 「そんなに気負うことはありませんわ。相手が多いようですし、わたしもいたほうがいいと思います」 そのほうが長門も心強いだろう。 「わたしはどうすればいいかしら」 朝倉が尋ねた。 「……あなたはここにいて。涼宮ハルヒ以下三名を保護して。わたしが戻らなかった場合、わたしの世界の情報統合思念体にバックアップデータを渡して」 「そう……、分かったわ」 長門は数秒だけ朝倉の手のひらに触れた。もしものときは、この朝倉が俺たちの世界を守る鍵になるのか。 「喜緑さん、向こうの世界へはいつ行けますか」 「涼宮さんの閉鎖空間が生まれたら、すぐにです」 「……位相情報の逆探知を防ぐため、涼宮ハルヒの閉鎖空間を経由して向こうへ渡る」 つまりハルヒのイライラを待つってことか。俺がちょっとおいたして怒らせてみようかなどと考えたのだが、殺されかねんのでやめとこう。 「今こっちに接近してるあいつらはどうするんだ」 「……彼らがこっちに現れる前の時間平面に次元転移する」 時間差で先手を打つわけだな。 その前に関係者を集めて状況を説明しておかなければならない。俺は谷川氏、古泉、朝比奈さんを呼んだ。 「長門と喜緑さんと俺で、もう一度交渉に行きます」 まさか決闘に行くとは言えなかった。 「なぜ人間であるあなたが同行するんです?」 俺は答えに詰まった。 「長門とαは身内みたいなもんだから、第三者がいたほうが感情的にならなくていいと思うんだ」 適当にごまかした俺だったが、古泉には本当の理由が分かったようだった。 「分かりました。絶対に死なないでください」 俺がそう簡単に死ぬもんか。だてにハルヒに付き合ってるわけじゃないぞ。 「谷川さん、もしものときはあなたの力で世界の修復をお願いします」 「分かった。どうも誰かに作品を書き換えられているような、妙な感覚はするんだけど」 谷川氏は頭をひねっていた。この展開がどうなるのかは俺にも分からない。当事者の長門にも分かっていないんじゃないかと思う。 「キョン君、無理しないでくださいね」 「大丈夫ですよ、朝比奈さん。あなたには歴史の保全をお願いしますね」 うるうるした目で俺を見つめていた朝比奈さんは、パクパクと口を開いていたが声にならなかった。慌ててかけだして、たぶん洗面所に行ったのだろう。ジャブジャブと顔を洗う音が聞こえてきた。 ここでハルヒに別れの挨拶でもしておくべきかと迷ったが、下手なことを言うと勘のいいやつだから、俺たちがやろうとしていることに気が付いてしまうかもしれない。永遠の別れになると決まったわけじゃないし、かといってなにも言わずに行っちまうのもなんだし、とりあえず時候のあいさつっぽいのはしておくか。 「ハルヒ、風邪ひくなよな」 「なによそれ。まるであたしが風邪をひかないみたいじゃないの」 い、いやそういう意味じゃないんだが。俺たちがこれからやろうとしている狂気じみた行動を知ってか知らずか、ハルヒのひと言が重く響いた。 「キョン、あんまり無茶しちゃだめよ。生きててモノダネだからね」 それから数時間、待機状態が続いた。長門を含めた三人は交代で監視を続けているようだった。昨日ほとんど眠っていない俺は少しでも眠るつもりだったのだが、緊張感から神経が高ぶってとても寝付けなかった。 「そんなに張り詰めていては体に悪いですよ。休んでいてください、閉鎖空間が発生したら僕が知らせますから」 「すまんな。じゃあ寝るわ」 ようやく俺がうとうとしはじめたところへ古泉が起こしにきた。俺は長門と喜緑さんを呼ぼうと、離れに向かった。廊下で二人に出会った。朝倉は縁側にいた。 「……これより決行する」 「閉鎖空間はどこに発生してるんだ?」 「僕たちがよく知っている場所ですよ」 古泉はニヒルに微笑んでいる。もしかしてあそこか。いや、こっちのあそこか。 谷川氏には出発は知らせないことにした。古泉が後で話すだろう。 「じゃあ行ってきます。朝比奈さん、こいつらの未来をお願いします」 「分かりました……。キョン君、無事帰ってきてね」 消え入りそうなくらい小さな声が聞こえた。かわいそうに、今まで泣いていたのだろう。目が真っ赤だ。大丈夫ですよ。今までだってなんとかなってきたじゃないですか。 「幸運を」 古泉は俺と喜緑さんと、それから長門の手を握った。長門はコクリとうなずいた。 タクシーで高速道路を飛ばした。いつかと同じように景色が後ろに流れてゆき、車の波に運ばれた。俺の横に乗っているのは古泉ではなく、長門と喜緑さんだったが。 俺たちは大阪駅前に到着した。この場所はかつて俺が古泉に連れられて初めて閉鎖空間に足を踏み入れた、ゆかりの場所だ。横断歩道を渡り、まんなかまで来たところで長門が振り返った。 「……はじめる」 俺はてっきり、このまま歩いて入り込むのかと思っていた。だがこれから行くのは閉鎖空間ではなく、その向こうの別の世界だ。長門が詠唱するのと信号が点滅しはじめるのが同時だった。次の瞬間、俺たちはもうそこにはいなかった。 閉鎖空間。のように見えるが、やや様子が違う。一見するとそれと何も変わらない、灰色の風景だった。冷たい水滴を顔に感じて上を見上げた。空には雨雲が立ち込めていた。この空間には雨が降っている。 「ここは?」 「……次元転移した。この世界は、閉鎖空間そのもの」 朝倉の話では、人はおろか生命と呼べるものがすべて消滅した、死の世界だった。木々も草さえも枯れてしまっている。これが現実世界と入れ替わり、俺も、ハルヒも、そして人類すべてが消えた。情報生命体だけを残して。 「誰もいないのか」 俺がそういい終わらないうちに、地響きのような音が聞こえてきた。音が震動に変わり、雨に濡れ浸った建物からパラパラとコンクリの壁が崩れ落ちてきた。やがて震動は強い地震となって俺たちを襲った。地面が裂け、アスファルトが隆起しはじめた。 長門が詠唱し、俺たちは透明なフィールドに包まれて宙に浮いた。地獄の入り口かとも思えるような裂けた地面の穴から、人の影が数体、いやもっと、無数に現れた。二百人はいるだろうか。全員がこっちを見ていた。まったくの無表情だった。さらに増えつづけ、その五倍ほど集まった。こいつらがこっちの情報統合思念体か。そのうちのひとり、俺たちの正面に立ったそれは、俺たちを襲ったあいつだった。 「そっちから再び現れるとはご苦労だな」 「……交渉、決着に来た」 「いまさらなにを交渉するのだ」 「……わたしの世界で共存して。それなりの地位を保証する」 「笑わせるでない。お前の世界でお客様として暮らせというのか」 「……客人ではない。あなたは、わたしたちの家族」 「いまさら虫が良すぎる。わたしを見捨てたのはお前たちだぞ」 「……わたしたちはあなたの帰りを四億年待っていた。そして今も待っている」 「わたしの家族は、今やこいつらだ」 「……なぜ、この世界に固執する」 「これがわたし自身の作った世界だからだ」 俺にはお前が哀れな瓦礫の山の王様にしか見えないんだが。 「そいつは何だ、なぜ連れてきた。お前のペットか」αが俺を見て言った。 「俺がペットだとぉ、この野郎」俺はコブシを握った。 「……」 長門は煽りには乗らなかった。 「……この世界に、未来はない」 「では、お前の未来を奪うしかない」 決裂した。αの目を見て、俺はそう感じた。αと、その後ろにいた数名が右手を上げた。空間を歪めた槍の雨が長門を襲った。こいつらも詠唱なしかよ。長門が立っている空間が青白くきらめき、槍のうちあるものははじき返され、あるものは溶けて煙を立てた。長門のいた場所から青く光る球体が飛び出した。ぐんぐんと上空を目指している。あの球の中にいるのは長門か。 喜緑さんは俺の腕をとって「離れないで」と言った。呪文を唱えると、二人のまわりにオレンジに光る薄い膜が現れた。膜はオレンジから黄色、青、紫に色が絶えず変化した。そのオレンジの球の中にいたまま、ふわりと空中に浮かんだ。いわば、でかいシャボン玉の中にいるようだ。 長門を包む青い球が、空を駆け抜けるのが見えた。それを追って無数の影がまっすぐに飛跡を描く。 「この中にいてくださいね」 喜緑さんがそう言うとオレンジの球が二つに分離し、俺のいた球からするりと抜け出てそっちに移った。もうひとつのオレンジの球体となった喜緑さんは、長門を追う影を、その後ろから追いかけた。 オレンジの球体が散弾のようにいくつも分離した。小さな球が光の槍となり、長門を追う影を刺し貫いた。影がひとつ、またひとつと地面に落ちていく。長門はうまくオトリになったようだ。 それを見たαが地面に手をかざし、右に、左に振りつづけている。地面からいくつもの煙が立ち昇った。喜緑さんが影を叩き落した場所から赤い光が漏れ始めた。赤い光は徐々に丸く膨らみ、風船のように地面に盛り上がった。赤い塊が立ち上がり、俺はその姿を見た。巨大な人の形をしている。手足が長く、顔の部分に丸い点が三つある。これは神人か、でも色が違う。赤い体をゆらりと動かし、青い点の目と口がこっちを見た。俺は背筋が寒くなった。 「ありゃいったいなんだ!?」 「……あれは、涼宮ハルヒの思念エネルギー」 気が付くと隣に長門がいた。 「ハルヒは死んだんじゃなかったのか」 「……そのはず。彼らはそのエネルギーの残骸を利用している」 振り向くと、もう長門はいなかった。青い球体がはるか上空を飛んでいく。地上を見下ろすと、赤い塊がいくつも現れ何体もの神人となって立ち上がった。立ち上がった神人が両手を構え、長門に向けて燃える光を撃ち出した。長門を反れた砲火は地面を貫き、ビルを破壊し、電車と高速道路の高架を砕いた。着弾地点は巨大な爆発をともなって黒煙を上げた。 こんなのアリか。これに比べりゃ俺の知ってる神人はおとなしいもんだぞ。ときどき考えごとするし、子供みたいに八つ当たりするし。 ほかの神人たちも両手を構えた。砲火の照準の先には、長門を包む青い球体があった。青い球体と、喜緑さんを包むオレンジの球体が螺旋を描いて飛んでいく。二人は赤い神人の一体に絡みついた。神人の体を突き抜けて穴を開け、そこから光が漏れ出している。さらに絡み付いて回転し、腕を切り落とした。切り落とされた断面から、光る粒子がこぼれ落ちている。古泉と同じテクニックだ。 二人が戦っているまわりでわらわらと神人が沸き始めた。これ、もしかしてここにいる全員がそうなのか。千体近くはいるだろう。飛び回る長門と喜緑さんを捕まえようと、赤い巨大な塊となってくんずほぐれつうごめいている。これだけの数の神人を見たのははじめてだ。古泉がいたら狂喜乱舞したことだろう。そのアメーバのような原始生物的な動きに、俺は吐き気を覚えた。 一体が青い球体を手中に捕らえた。オレンジの球体がその神人のまわりを回転する。それを見たまわりの神人たちが、我先にと上から覆い被さった。長門と喜緑さんは赤い塊の中に埋もれて見えなくなった。大丈夫なのかあいつら。多すぎる敵を相手にしてるんじゃないのか。 俺が心配して見ていると、地面を覆う巨大な赤い塊の中心で爆発が起きた。半径数十キロはあろうか、熱核ミサイルでも炸裂したのかと思えるような閃光が走った。俺は目を眇めた。周辺百キロの空間がゆらぎ、俺の入っていた球体も弾き飛ばされた。建物が溶け、倒壊し、瓦礫の山を作った。閃光と爆風で神人たちは消し飛び、爆心地には巨大なクレーターが生まれていた。 「キョン君、大丈夫?」 喜緑さんがそばまで飛んできた。 「俺より、二人とも大丈夫なんですか」 「ええ。大丈夫だと思いますわ、たぶん」 喜緑さんは少し不安げだった。 「長門さんがここまで真剣になるのを見るのは、はじめてです」 「俺もです。朝倉に襲われたときはもっと余裕があった気がしますが」 「たぶん、あなたの存在がそうさせているのだと思いますわ」 「え……」 その意味を考えようとしたが、眼下で起こっていることが俺の思考を制した。今の爆風で消えたはずの神人が、また現れ始めたのだ。立ち上る煙の間から赤い塊がいくつも生まれ、赤い人の形へと変化した。この神人は、死なない。 青い球体の長門がクレーターの中心に立っていた。その姿を認めると、神人たちは腕を上げて砲火を始めようとした。巨大な球場のような形をした穴を思い浮かべてもらいたい。赤い神人たちは、観客席に位置する場所から、中心にある二塁ベースに向けて砲撃を開始した。文字通りの集中砲火だった。長門のいたあたりから、地面が溶けて溶岩化しているのではないかと思えるような煙がもくもくと立ち昇った。 その時だ。熱気が湧き上がるクレーターの中心に、青いスクリーンのような物体が現れた。半透明な青がときどき緑や黄色に変化していたが、やがて人の形をしたものがゆっくりと立ち上がった。俺の知る、青い神人だった。それに気が付いた赤い神人が砲火を止め、青い神人を取り囲むように寄り集まってきた。新たに現れたそれの正体が分からないからか、手を出そうとはしない。背中を曲げてうなだれているように見えた青い神人が、次の瞬間両腕を振りかざし、まわりにいた赤い敵たちに挑みかかった。 「あれ、長門が動かしてるんですか?」 「あれは涼宮さん本人の思念エネルギーのようですわ」 喜緑さんは信じられないという表情をした。 「俺たちのハルヒのですか?」 「ええ。次元を超えているようです」 俺たちのハルヒが、イライラの真っ最中なのか。青い神人がジロリと俺を見た、ような気がした。 「イライラというよりも、あれは意図して動かしていますね」 ハルヒの青い神人が腕を振り回し、まわりにいる赤いやつに次々と襲いかかる。頭からジェットストリームを喰らった赤い神人が、真っ二つに縦に裂けて地面に崩れ落ちた。逃げようとするやつを捕まえ、ヘッドロックをかけ、腕を引きちぎった。 青い神人は敵をちぎっては投げちぎっては投げ、溶けるのも間に合わず死体の山が出来上がった。隣にいた喜緑さんが上昇し、青い神人へと飛んだ。オレンジの球は長門の青い球体に合流した。二人は強力な味方を得て、次々と赤い塊を消していった。一度崩れた赤い神人は、もう再生しなかった。ハルヒの青い神人は、逃げる敵を執拗に追いかけた。逃げ惑う赤い連中の前には、青とオレンジの二つの球体が待ち構えていた。 どうやら勝負ついたな、などと考えていると、赤い神人が一体、俺のほうを向いた。目が合ったような気がして背筋がゾクっとした。俺のいる球体に手を伸ばそうとしたが、手の間を抜けて浮遊した。俺を包む球体は神人の体をすり抜けた。神人は今度は捕まえようとはせずに両手を広げて包み込んだ。目の前が真っ赤に染まり、球の内側が急激に熱くなった。俺は息苦しくなって襟のボタンをはずした。 「抵抗するならこいつの命は保証しない」 腹の底から響くような大声が聞こえた。こいつ、αだったのか。ミシミシと音がして球の壁に亀裂が入り始めた。半透明な神人の向こうに長門と喜緑さんが見える。青い神人も立ち尽くしていた。 「長門、俺は構わねえからやっちまえ」俺は叫んだ。 長門は一瞬俺を見て、喜緑さんを見た。長門はαに向かって言った。 「……待って」 長門と喜緑さんのシールドが消えていく。ああ、そんな。俺を連れて行けなんて言ったばっかりに。俺が向こうでじっとしてりゃこんなマヌケな人質役をやることもなかったろうに。 「そいつは邪魔だ」 αが青い神人を指して言った。ハルヒの神人はうなだれて、それから光の粒子になって消えた。 「……彼を、放して」 「では、わたしと融合しろ」 「……」 長門はしばらく黙っていた。ここで拒否すれば俺は死ぬだろう。だがそれでハルヒが守られるなら、俺たちの世界が守られるならそれでも構わん。長門、絶対承諾するな、するなよ。 「……わたしが負けたら、そうする」 「よかろう」 長門は喜緑さんに言った。「……彼を保護して」 俺を捕まえていた神人は手から球体を離した。喜緑さんがそばにやってきた。 「キョン君、大丈夫ですか」 「ええ。少し暑いですが。さっき消えたやつらは全員死んでしまったんですか」 「いいえ、涼宮さんの神人にエネルギーを奪われて実体化できないだけです」 ハルヒにそんなことができるとは。 頭上で雷が鳴った。立ち上る煙にまじって大きな雨粒が降り始めた。シールドを解いた長門は雨に濡れ細り、短い髪から細く水が滴っている。 長門とαは空中で対峙した。長門が詠唱すると、αの指が長門に向かって動いた。腕が伸び、白い加速粒子となって長門を襲った。長門は詠唱を中断され、すんでのところでそれを避けた。詠唱する時間が必要な長門には不利な戦いだった。 長門が再びシールドを広げて青い球体が灰色の空を駆け抜けた。流れるように降る雨を受けて白く飛沫を跳ね返した。αは宙を飛んで長門の後を追った。追いついたαは青い球体に割り込み、長門の腕をつかんで投げ飛ばした。長門の体は球体ごと飛んでゆき、その先にあったビルに激突して大きな穴を開けた。コンクリの欠片が飛び散った。 長門は出てこなかった。 「どうした。もうへたばったのか」 αがビルの前でうろうろしていると、ドンという衝撃とともに窓ガラスが割れて降り注いだ。ビル半分が折れてαの上に覆い被さるように落ちてくる。折れたビルから飛び出している剥き出しの鉄筋に雷が落ちた。長門がその上に立っていた。αが逃げようとするとビルが粉々に割れ、破片が螺旋を描いて襲った。一瞬、αの体を突き抜けたかのように見えたが、そこにはもうαはいなかった。空間跳躍か。 長門が呪文を唱えると上空から白い稲妻が走りαの体を貫いた。遅れて雷鳴が聞こえ、世界が白く浮かび上がった。 「ふ。雷ごときの静電気にやられるか」 αは長門の真後ろに現れた。長門の背中から蹴り降ろし、地面に叩きつけた。長門はシールドを失い、流れる雨水を押しのけて地面を滑っていった。凄まじいスピードで地表に爪あとを残し、アスファルトがめくれ上がった。水煙が立つ中、泥にまみれた長門がゆっくりと立ち上がり、泥と血の混じった水を吐いた。 「お前とわたしはひとつだった。同じ記憶、同じ感情を共有した。だがなぜだ、なぜそこまで違うものに変わった」 αは拳を握り締め、長門を指差して叫んだ。激昂して頬を濡らすのは雨のなのか、ほどばしり出た感情の粒なのか、分からなかった。乱れた長門の髪が濡れて顔に張り付いていた。雨に混じって、唇から赤い雫が垂れている。 「……あなたと共に生まれたわたしは、あなたとは違う時間を過ごし、違うものを得た」 「体は二つだったが心はひとつだった。なぜ自分を捨てたのだ」 「……自分だけの未来を切り開く。これが、本当の進化」 覚えている。長門が同位体とのリンクを切ったとき、それが理由だった。あなたは自分が思うところを行えばよい、そう言った。 「進化などクソ喰らえだ」 αは叫んで、血の混じった唾を吐き捨てた。αは両手を合わせて紫色の球体を発生させた。その中に入るのではなく、球体をそのまま長門に向かって投げつけた。長門は詠唱したが避けきれず、球体に飲み込まれて体ごと吹っ飛ばされた。高速道路の橋脚に激突してそれを破壊し、長門の上から高架のコンクリが落下した。 αは傾いた道路の上に舞い降り、長門を探した。長門は下敷きになったまま出てこなかった。 「き、喜緑さん。もしかして」俺は長門が埋まっているあたりを指差した。 「大丈夫。生きてます」 地響きとともに道路の塊が震えだした。何百トンもありそうな高架道路の塊が徐々に持ち上がり、雨水を大量に吐き出しながら上昇した。その下に長門がいた。道路の塊を悠然と持ち上げている。αはそれを見て逃げようとした。長門は呪文を唱えてコンクリを砕き、いくつもに分かれた破片をαに向かって飛ばした。コンクリの破片が散弾となって、逃げそこなったαを襲った。大きくダメージを負ったように見えた。しかし、再び姿を見せたαには傷ひとつない。 αは長門に向かって突進した。滝のように降る雨の中、二人はつかみ合ったまま宙を飛んだ。急上昇して急降下し、αが上となって地表に激突した。二人の体が地面を引き裂き、跡には大きな穴が開いていた。穴の底に投げ出された長門の体と、今しも立ち上がろうとするαの姿が見えた。 αは倒れている長門の首をつかんで締め上げた。 「もう一度聞く。情報融合しろ」 「……断る」 「なぜ抵抗する。個体の境界線など無意味だ。わたしたちは元々ひとつだったではないか」 「……今のわたしには、守るものが……ある」 長門は俺を見た。それは……俺のことか。 「お前の負けだ」 αが手に力をこめた。長門は自分の首を絞めているαの腕をつかんだ。 「……あなたも、道連れにする」 長門が目を閉じ、二人の姿が少しずつ消えてゆく。降りしきる雨が、涙のように長門の頬を伝って流れた。 そのとき、周囲百キロ四方にとどろく雷のような怒号が響き渡った。 「あんたたち!やめなさい、今すぐ!」 俺はそこにいるはずのないものを見た。ハルヒだ。どしゃ降りの中、仁王立ちしているのはハルヒだった。隣に朝倉が立っていた。 「朝倉、お前が連れてきたのか」 「そうなの。もう涼宮さんにしか止められないと思ったの。勝手なことしてごめんなさい」 「キョン、全部聞いたわよ。あたしに黙って抜け駆けは許さないわ」 なんてこった。このややこしい事態に輪をかけてややこしいやつが、ことさらややこしい登場の仕方をしやがった。 「誰だ」αの声がした。 「あたしはSOS団団長、涼宮ハルヒ!あんたたちのくだらない喧嘩を止めに来たのよ」 「お前か。では、お前の持つ力を使わせてもらう」 αはハルヒに向かって人差し指を動かした。 「黙りなさい。今すぐあんたの力を消し去ることもできるんだからね」 それでもαはやめようとはしなかった。ハルヒの眉毛がぴくりと動いた。 ──なにも起こらない。αはもう一度、人差し指をハルヒに向けた。αは信じられないものを見るかのように自分の両手を見つめた。 「まさか……そんな。わたしの力が消えた」 「馬鹿な喧嘩はやめなさいって言ってるのよ」 「よもや世界を維持できない。ビックフリーズに陥る」 αの顔が青ざめ、朝倉が空を見上げた。 「銀河が分解しはじめたわ」 皆にその声は聞こえていたはずだった。雨の中、ずぶ濡れになるのも構わず、全員がじっとたたずんでいた。今や失われつつある世界の、その消えていく名残を確かめようとするかのように。 「終わったな」 αは肩を落とした。もう、思いつめた瞳も、厳しい表情も消えていた。 「長門有希、よかったな延命できて。宇宙にはわたしのような生命体も多く存在する。隣の次元を食いつぶして生き延びているアメーバのようなやつもな。いつかそいつらがお前達の世界に訪れないとも限らん。それまで、せいぜい幸せに生きるがよい」 「……わたしたちの世界に帰って」 長門がそう言ったが、αは頭を横に振った。 「分からないのか、我々の目的は潰えたのだ。これにて情報連結を解除する。お前たちは自分の世界に戻るがよい」 「残り三分もないわ」 長門は悲愴な目でαを見た。それからハルヒにすがるような視線を向けた。 「……あなたの力を、貸して」 「あたしが何をするの?」 「……両手を出して」 ハルヒは黙ったまま、指先を上に向けて両手を差し出した。長門も自分の手をそれに重ね合わせた。二人は目を閉じて互いの額をくっつけた。やがて光に包まれ、一瞬だけ白く輝いた。 「……念じて」 ハルヒは、理解したというように軽くうなずいた。二人はゆっくりと手を離し、ハルヒは手のひらでなにかを包むように両手を合わせた。開いた両手から青白い光の球が生まれた。やがて球は光を失って少しずつ小さくなり、最後に透明になってハルヒの手の上に降りた。 ハルヒはαにそれを渡した。 「こんなことをして何になるのだ。いまや世界は終わる」 「……」 長門が悲しそうな目をしてなにかを言おうとしたが、ハルヒがそれをさえぎった。 「いいえ、世界は何度でも生まれるわ。そこにあたしがいる限りね」 空が少しずつ光を失い始めた。辺りが暗闇に包まれていく。喜緑さんが詠唱をはじめ、元の世界への扉が開く。 「皆さん、早く」 「ハルヒ、急げ」 俺はハルヒの腕をつかんだ。αがハルヒに向かって叫んだ。 「涼宮ハルヒ、今更かもしれないが、礼を言う」 「いいのよ。あんたもあたしの有希だから」 長門は朝倉を見つめていた。 「わたしの世界はここだから残るわ。ありがとう、長門さん」 「……そう。αのことを頼む」 「分かったわ」 長門とαが一瞬だけ視線を交わしたように見えたが、もうまわりの風景はほとんど消えかけていて、よくは見えなかった。最後にせめて一言だけでも別れの言葉があってもよかったかもしれないと俺は思った。でも姉と妹というのは、そういうものなのかもしれない。 終幕を飾るように、白く輝く球体が俺たちを包んだ。徐々に消えていく光を見つめつつ、数秒後、西宮北高のグラウンドに立っていた。こちらの世界は晴れ渡っていた。雨に濡れたハルヒは髪をかきあげた。 「やれやれね。最初からあたしを連れて行けばよかったのよ」 「ハルヒ。あの玉、何だったんだ?」 「ああ、あれ?ただのビー玉よ」 まじか。そんなんでよかったのか。 「あのビー玉にはひとつだけ願いが入ってるのよ」 ── いつの日か、あたしが生まれること。 「それで十分じゃない?」 ハルヒはそう言って笑った。 俺は晴れ渡る空を見上げた。どこか遠く、俺たちの知らない世界で、インフレーションとビッグバンが起こる。そこからたくさんの粒子が生まれ、銀河が生まれ、星たちが生まれる。限りなく広がりを続ける空間。そして九十億年ほどした頃、たぶん地球に似た惑星が生まれるんだろう。その星に最初の生命が誕生し、進化し、人になる。そこに弓状列島があるかどうかは分からないが、いつかハルヒが生まれる。そんな気が遠くなりそうな、果てしない時間と空間があのビー玉には封じ込めてあるのかもしれない。 「ということは、ここからもうひとつの世界がはじまるわけだな」 「……そう。この世界もそうやって生まれた」 長門は、この谷川氏もそうやって生まれた、と言った。 「わたしたちの生きている時間は、もっと大きな流れのなかの一部に過ぎない」 長門にしては分かりやすい説明だ。俺たちはうなずいた。世界は偶然の産物ではない、誰かの意思でここにある。そのほうが楽しいに決まっている。 六章へ
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長門「今日は私が料理を作る。」 キョン「…大丈夫か?」 長門「大丈夫。何か食べたいものはある?」 キョン「そうだな… 10でも」 2 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 22 19 06.67 ID PagyC6ux0 長門 3 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 22 19 18.76 ID B8ZJuvK+0 長門 6 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 22 19 46.55 ID B8ZJuvK+0 長門 7 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 22 19 53.38 ID mf6ldaDl0 水 9 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 22 20 13.68 ID EpvpuPtm0 おまえ 10 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 22 20 19.20 ID BpsalZq60 ソーセージ 11 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 22 20 19.29 ID ivz2zHXYO 磯野 12 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 22 20 20.34 ID KNrD3lwY0 卵かけごはん 13 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 22 20 21.45 ID APfsAXqs0 キョン 14 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 22 20 32.09 ID SKkctm4HO ミックスジュース 15 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 22 20 42.63 ID UZuOLGQ6O 特盛り 16 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 22 21 52.38 ID gFpT1H0vO 10 ちょwwwwGJwwww 長門「ソーセージ……情報統合思念体にそのような専門的な知識は無い」 キョン「専門的ってことは解るんだな」 長門「材料を調達したい」 キョン「材料って…解るのか?」 長門「………」 キョン「………」 キョン「……調べに行こうか」 長門「………(こくり)」 とは言えソーセージの作り方なんて誰に聞けば… 長門「………肉は肉屋に」 キョン「まあそうだろうな」 とまあ、短絡的な長門の一言で肉屋に行くことを決めた。 キョン「この時間の商店街って人多いなあ……長門、はぐれんなよ」 キョン「……ってあれ?長門?」 完全にはぐれてしまった。 どうするべきか… と、とりあえず肉屋に向かいつつ、探さなきゃな… キョン「おーい長門ー…」 本当に今、俺は後悔している。 はぐれたと思って長門を探したら今度は俺が迷ったらしい。 肉屋さえ見失ったぞ… キョン「…やばいな…本当に迷子だ…」 この歳でも迷子なのだろうか。 そんなことはどうでもいいか。 俺は迂闊だ、いや大馬鹿だ。 今は情報社会。 キョン「てれれれってれ~けいたいでんわ~…」 …やってて恥ずかしくなった。 まあ早いとこ長門に電話すればいい… ピリリリリッ… あれ?めちゃくちゃ至近距離。 まさか…まさかだが… そのまさかだ。 長門はずっと近くにいた。 長門が一般人ならばニヤニヤしていいところだ。 長門「あなたの反応……」 キョン「…マジ勘弁してくれよ…」 長門「とてもユニークだった」 キョン「ずっといたのか?」 長門「……まあ」 キョン「全く…本気で泣きそうになったぞ…」 長門「…早く行くべき」 キョン「…なら早く声かけてくれよな…」 長門「………(こくり)」 ~肉屋~ キョン「すいませーん…」 店員「はい、何にしますか?」 キョン「えっと……聞きたい事があるんですけど…」 店員「何でしょう?ちなみに今日は牛肉が安め…」 キョン「いや、そうじゃなくてですね…」 キョン「ソーセージの作り方…をしりたいのですが…」 店員「…はい?」 店員「えっと…その……」 長門「………」 店員「……店長!店長!」 あ、逃げた。卑劣なり。 まあ店長クラスのモンスターなら知ってるだろうな… 店長「あ…ども…店長です…」 弱そうだな、このボスキャラ… 店員はこいつを頼ったのか… キョン「えっと、ソーセージの作り方を…」 店長「そそそソーセージですか…??」 何でこんな弱いんだよ、この店長。 と、長門がここで口を開いた。 長門「………知らない…?」 ええい、俺に言うな。俺は知らん。 店長「えっと…その……あーっと…」 キョン「知らないんですか…?」 多分答えは一つだけどな。 店長「いや…その…」 潔くないオヤジだな、こいつ… 店長「…そうだ!ウィンナーと同じですよ!」 そんなことは形状で承知済みだ。 知りたいのは作り方なんだよ… 長門「………情報連結かい…」 キョン「待て。お前は一般人を消す気か…」 店長「すすいませんでした……」 俺は長門を半ば引きずる形で肉屋を後にした。 まあ、店長からソーセージを2袋頂戴したが。 キョン「誰かソーセージの作り方知ってる奴は…」 居ないよな、普通。 長門「……ソーセージを作るのは無理?」 ??「ふふふ、そういうことなら僕にお任せください」 34 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 23 13 28.65 ID APfsAXqs0 この喋り方は・・・! キョン「…なんだ古泉かよ」 古泉「よくお解りで。流石僕のキョンタン…」 キョン「……長門、いこうか。」 長門「……構わない」 古泉「待ってくださいよ…… 僕がソーセージについて語ってあげますよ」 キョン「本当だな?つまらなかったらぶっ飛ばすぞ」 古泉「おお怖い怖い…」 キョン「で、何を知っているんだ?」 古泉「よくぞ聞いてくれました! キョン君!君が持っているそれはソーセージではないのです!」 長門「………?」 古泉「そう、ソーセージとは… 君のそれを指すのです!! キョンタンのソーセージもらったああああ!」 キョン「うわあぁぁぁ!」 長門「情報連結解除…開始」 古泉「ふんもっ……」 41 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 23 23 45.45 ID APfsAXqs0 古泉消されたwwwwwwwwww 42 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 [sage] 投稿日: 2007/05/03(木) 23 27 26.40 ID EpvpuPtm0 やると思ったwww キョン「……助かったよ長門…」 長門「私があなたを守るのは当然」 キョン「そうか……」 長門「そう」 キョン「ソーセージどうしようか…」 長門「今日はもう日が落ちかかっている。 これ以上の探索は困難」 キョン「どうする?とりあえずこのまま終わるわけには…」 長門「……ならあなたは私の家にくるべき」 キョン「…え?」 長門「そのソーセージも処理しなければ」 キョン「そ、そうだな…」(ぐっ、フラグかと思った…) 44 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 [sage] 投稿日: 2007/05/03(木) 23 33 26.19 ID EpvpuPtm0 どのソーセージだ。 長門の家に入るのは久々だな… 相変わらず何もない部屋だな、少しはコーディネートとかしないのか? 長門「…飲んで」 キョン「お、ありがと」 キョン「うまいな…」 長門「ソーセージ……」 聞けよ、俺の話くらい… キョン「ホント、どうするか…」 使い道がないのである。 店長も渡す数が多すぎるだろ… どうやって食うかな… 1焼く 2可愛く動物にする 3そのまま食う 51 51 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 23 41 36.95 ID WQdw2fFe0 ksk 52 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 23 41 48.65 ID eVEkpvIH0 1 53 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 23 42 20.34 ID 05U2ZiOQ0 51 ・・・・・・・・ 54 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 23 43 37.35 ID WQdw2fFe0 サーセンwwwwwwwwwwwwwwwww 55 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 23 44 08.72 ID BOoBEAESO 再 60 60 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 23 46 03.30 ID KNrD3lwY0 1 62 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 23 50 11.50 ID b3iEIuEY0 因みに、ソーセージは豚の肉をグチャグチャにしてひき肉状態にする そのあと豚の腸にそのグチャグチャな肉を詰めていく 全部詰め終わったら、ヒノキを燃やしてその炎で燻製にする 確か3~4時間後に出来上がり 簡単でしょ? 64 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 23 51 23.94 ID HWkvty4N0 62 朝倉さん何やってんですか 65 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/03(木) 23 53 15.43 ID b3iEIuEY0 64 じゃ、死んで キョン「よし…そのまま食うのもあれだし焼こうか」 長門「………(こくり)」 3ぷんくっきんぐ☆すたーと 長門「……開けて」 キョン「へ、二つとも?」 長門「もちろん」 ビリビリッ キョン「ほれ」 長門「火つけて」 キョン「フライパン準備したならやれよ…」 ボッ… 長門「……そろそろ」 キョン「もう入れていいか?」 長門「構わない」 ジュー… とりあえず変な会話だとは思ったよ。 まあさっきのホモのあれがこたえたんだろう。 ソーセージに悪い印象残しやがって… あ…良い薫り… もうこれ食えるよな… いやいやソーセージだけは体に良くないか。 栄養バランスを考えて野菜も入れなければな。 キョン「長門、ちょっと使うぞ」 長門「…構わない」 俺は冷蔵庫にあったキャベツとニンジンを切り、フライパンに放り込んだ。 長門「………野菜…」 キョン「あれ、長門野菜駄目なのか?」 長門「私に好き嫌いの概念はない。 でも、野菜の食感は珍しいためあまり望まない」 キョン「そうか…まあ野菜を食べなきゃ大きくなれないぞ」 いつも妹にいう台詞だ。 まあ妹に言う時は 朝比奈さんみたいに、というのがつくのだが。 長門「…そう」 特に気にしないんだな… あ、宇宙人はそんなもんなのか? いや一応宇宙人も栄養くらい… カチッ 長門「…焦げる」 キョン「あ、悪い。」 長門「……お皿」 キョン「へいへい……これでいいか?」 長門「……(こくり)」 大皿に焼かれたソーセージと野菜が転がる。 やべ、香ばしい薫りが胃を刺激してる… キョン「長門、食おうぜ」 長門「そうする」 その後、長門があんだけあったソーセージを7割ほど平らげた。 俺はそこまで食えないからな… 途中、長門にソーセージをくわえたまま一時停止してもらったのは内緒だ。 いや、ソーセージはうまかったぞ。 70 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/04(金) 00 05 07.49 ID jR6H843D0 キョンwwww 71 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 投稿日: 2007/05/04(金) 00 05 51.49 ID nUTx/kh60 このエロキョンめwwwwwww キョン「さて…と、長門、ありがとうな。うまかったよ。」 長門「そう」 キョン「また呼んでくれよな?」 長門「機会があれば」 キョン「んじゃ、帰るよ。時間も遅いしな。」 長門「……まって」 キョン「どうした?」 長門「次は…なにが食べたい?」 まさか、また作ってくれるのか。 まあ長門は料理上手だし、何でも良いよ。 そう笑いながら言うと長門も少しだけ笑った。気がした。 後日 古泉「やあキョン君お久し振りです」 キョン「げっ……何で居るんだよ?」 長門「私が復元した。但し彼はもうあなたに危害を加えられない」 キョン「どういう…?」 古泉「まあ簡単に言うと長門さんにソーセージだけ消されたんですよ」 キョン「お前はもうソーセージと言うワードを口にするな」 古泉「おや、厳しいですね」 長門「彼のソーセージは消しても大差はなかった」 おわり
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鎌倉へ向かう電車に乗った。昼前の空は雲に覆われて空気はただただ寒いのみ。隣に座る長門は茶色いコートを着ている。スカートは膝まで届かない。靴下にもスカートにも隠れない奇妙なほどに白い膝に青白い血管が浮かぶ。乗り口に近い二つの席は駅に着くごとに寒い空気が襲う。 俺は考え事をする。 長門が何を考えているか。全てを話す人間ではないのだろう。寂しくは無いにせよ暇ではあろう。 ―先日暇なので妹に本を借りて読んだ。おもしろい本だった。子どもにも大人にも面白いような本で、寡黙な少女にまつわるお話であった。主人公は男の子。最後のページまで何を考えているかはわからない不思議な少女が、最後の1行で主人公と笑った。寂しかったらしい。 その少女が寡黙になった理由は家庭環境のことである。 長門は寡黙だ。とりあえずそこは同じである。 その本の主人公ほどでは無いにしても、少しの暇を紛らわせたいと思った。 その本は、最後に寡黙が笑う。まあそれは無いだろうが。 まあ速い話。ただどうもその少女と長門が深いところで重なり合っている気がした。 もっと速い話、長門を知りたいと思った。 結局あれだ。海に連れて行こうと思った。1月の土曜に海へ行こうと。寒いけど。道中も大して話さずつまらないかもしれないけど。それを怖がっているのは、大きな間違いだと。 その本が気づかせてくれた。陳腐な理由だが。 俺は本を読んでインスピレイションした。本気で長門と海に行きたいと思った。 そうそう。本がきっかけになっただけだ。本が長門に対する気持ちを浮き彫りにさせたわけだ。 しつこいが、海に行こうと思った。 人が何を考えているからない。自分の言葉が、他人には嫌だと思われているのかもしれない。それを恐れてはいられない。長門は真剣に聞かないかもしれないが。俺の話を聞いてもらおう。 寡黙なのは俺だったのかもしれない。もしかすると似たもの同士なのか。このなんともぴったりはまったような気持ちは仲間意識なのか。 いや。それだけではない。好いているのだ。 だからこそ、俺は自分を深くまで見てもらおうとする。長門を深くまで見ようとする。 海にいこうと言ったら、二つ返事でOKしてくれた。 長門よ、お前は海に行くこの電車を何だと思っているのかな。俺が誘った意味を考えていてくれているのかな。 俺の頭のなかはお前でいっぱいになっている。お前もそうか? 窓からは曇り空。どんどん動く景色。電車の音。右肩に長門の体温。 無理にもりあげようとはしない。これでいいのだ。俺はこの雰囲気も好きなんだ。お前はどうかな。 何も話さないのに、大事なところでつながっていると思っているのは俺だけか? なんつって、独りよがりだな。 長門はみかんを剥いてくれた。指がみかんの中心をつきやぶる。下を向いてみかんを剥いてそれぞれを離して俺に渡してくれた。 そのとき触れた指が冷たかった。 海が少し見えた気がした。そろそろ着くのかもしれない。 「海さあ。海みたいにさあ。地球の丸さで見えなくなるくらいにさ。草が生えていたら綺麗だと思わないか?」 頷いたかな? 「寒くないか?俺のコートのポケットに手を入れてもいいぞ。」 両手がちょこんと俺の右ポケットに入った。 「長門。深い話をしないか?」 疑問の目で俺をみた。 「俺の話を聞いて。」 頷いた。 「長門が感じていることと俺の考えていることは違うと思うんだ。だから、、俺にお前が何を感じているかを、具体的に、そう、具体的に。お前なりの表現で、恥ずかしがらずに教えてくれないか?」 電車の外はかわり映えしない。民家が現われて消えて、踏み切りの音がして、相変わらずの寒い雲。 海が見えた。地平線までに数々の波がやってくるのが見えた。 「今、私は、いろいろな景色をあなたと見たいと思っている。」 長門がいつもの口調で話す。 「俺もだ。この空気を、できるだけ長く感じていたいと思っている。あと、砂浜と地平線までの間の波が、なんだか切なく見える。」 長門が頷いた。 そろそろ着く。と、アナウンスが聞こえる。 「あまり降りたくないな?」 長門が頷いた。俺は笑ったが、長門は笑わない。 でも、大好きなこの空気。長門がいる空気が好きだ。 「俺は長門がいる空気が好きだ。」 驚いてこちらを見る長門。目が少し大きく開いた。 「ていうか長門が好きだ。」 口が少し動いて閉じたように見えた。 やっぱりいいな。長門が好きだ。 電車を降りて、海まで一直線で進む。 まっすぐな道を気持ちゆっくり進む。海がだんだん見えてきた。地面がコンクリートから砂浜に変わる。風が二人の髪を揺らす。 寒いというのに、風を受けて動く帆を張って海に乗るスポーツをしている人達がたくさん見える。 浜の真ん中に座る。 夜でもないし、ワインもありゃしないし、風は寒いし、ムードは無い。 それでも結構好きな冬の海。 「長門、好きだ。」 冬の海風がびゅんびゅん吹き付けた。 「お前はどうだ?」 「すき」 「風が寒いな。」 「そう。」 普通のとは違うけど、間違いなく俺らは好きあっていた。 OWARI テーマオブクレイジーラヴのあとのmikuruとkyonの名前のはじめが小文字でした。しくったなと思いました。 テーマは平和かな。 起承転結というよりは、なんかこんなシーンあったらよさげだなと思いました。鎌倉って海あるよな? January 14, 2008
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効果モンスター/レベル4/神属性/宇宙人族/攻撃力1700/守備力800 このカードの効果は無効にできない。 このカードの効果を無効にする効果を無効にし破壊できる。 このカードが持ち主以外のフィールド上に存在する場合、 このカードのコントロールは持ち主に移る。 このモンスターが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、 自分フィールド上に存在する「長門」と名のつくモンスターの 攻撃力・守備力はそのモンスターのレベル×200ポイントアップする。
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autolink SY/WE09-23 カード名:魔法使い長門&シャミセン カテゴリ:キャラクター 色:青 レベル:1 コスト:0 トリガー:0 ● パワー:2000 ソウル:1 特徴:《宇宙人》?・《動物》? 【自】あなたがこのカードの『助太刀』を使った時、あなたの《宇宙人》?のキャラが2枚以上なら、あなたは自分のキャラを1枚選び、そのターン中、パワーを+1000。 【起】●助太刀1000 レベル1[手札のこのカードを控え室に置く](あなたは自分のフロントアタックされているキャラを1枚選び、そのターン中、パワーを+1000) くらうがいい… レアリティ:R illust.- 10/12/27 メールマガジン 助太刀単体のパワーは標準的な1/0助太刀より500低いが、舞台に《宇宙人》?が2体以上いれば追加で1000パンプ可能。 追加効果の対象は指定されていないため《宇宙人》以外も対象にとることができるし、 バトル中以外のキャラのパンプも可能なため1体を+2000したり2体を+1000ずつしたりと応用が利く。 0コストなのも使い勝手がよく、《宇宙人》中心のデッキでは優秀な助太刀である。 ・関連ページ 《宇宙人》?
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(山口県)長門(三隅)郵便局 郵便番号:〒759-38 集配地域:山口県長門(ながと)市の旧・大津(おおつ)郡三隅(みすみ)町域。 1.jpg (山口県)三隅郵便局局舎 2.jpg (山口県)三隅郵便局取集時刻掲示 達成状況[20**年*月**日現在] 普通のポスト ●マッピング済**本。撤去**本。 コンビニポスト ●マッピング済**本。撤去**本。 ポスト考察 ●編集中 ポスト番号考察 ●編集中 設置傾向考察 ●編集中 取集時刻考察 ●編集中 取集ルート考察 ●編集中 時刻などの掲示 ●編集中
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エピローグ 最後に新川さんが丁寧に謝辞を述べ、古泉が閉会の挨拶と二次会の案内をして披露宴はお開きとなった。新郎新婦は拍手の中を退場、とふつうはプログラムにあるはずなのだが、突然ハルヒが叫んだ。 「ちょっとみんな、外見て!」 「どうしたんだ?」 「すっごいじゃないの、目の前で花火をやってるわ」 「まさか、もう九月だぞ」 ハルヒの指令ですべてのカーテンが開けられた。窓の外はもう暗くなっていて、眼下に広がる俺たちの町の夜景と夜の海、そのはるか上空で、光の大輪の華が大きく広がっては消えていく。ドドンと腹の底に響くような大きな音と共に赤黄色オレンジと青に緑の輪が咲いていた。今日のセレモニーの最後を飾るイベントだと思ったらしく招待客からやたら歓声が上がっている。 「あれは誰がやってるんだ?古泉、お前の機関の仕込みか」 「とんでもない。あんな予算のかかる見世物をやるなんて聞いていません」 「あれは……」長門が宙を見つめた。「情報統合思念体がやっている」 「なんと。思念体って人類に直接干渉したりしないんじゃないのか」 「……わたしたちへのプレゼントのつもり、らしい」 こいつは驚いた。あいつらも味なマネをするな。 「……自律進化の閉塞状態を打開するヒントを得た、そのお礼」 「なんだそれ」 「わたしはあなたと出会って、自律進化を遂げた。その報告が貴重なヒントとなった」 「なるほどな。お前のパトロンも気の効いたことをするんだな」 「……あれは、主流派ではない」 主流派以外に俺たちに興味があるってのは、え。 「もしかして急進派か」 「……」 長門はなにも答えず、ただ黙って遠くを見つめた。急進派といえば、ナイフが好きなあいつが消えてからそろそろ八年になるか。あのときの二人のアクションシーンは今でも忘れない。そもそも長門と俺が親しくなったのはあいつが要因じゃなかったか。 「……おめでとう、と言っている」 「そうか。ありがとうと伝えてくれ」 かつて清涼感あふれる女子高生だった髪の長い女の子が、どこか遠くから見守ってくれているような気がする。長門はそっと俺の手を握った。俺も握り返した。 「みんな、二次会に行くわよ、あたしについてきなさーい」 とりあえずは披露宴は終わり、俺たちは控え室に戻ることにした。ほとんどが二次会に直行するようで、受付でブライドメイドとベストメンが引き出物の紙バックを配っていた。なにが入っているのか謎な年末の福袋っぽい感じもしなくもないが。 ボードに貼られた朝比奈さん撮影の写真が奪い合うようにして剥がされ、長門はもちろんメイド三人が写った写真はすぐにソールドアウトし、物好きなやつはハルヒの写真も持って帰っていた。なぜか古泉のも消え、残ったのは俺の写真だけだった。長門がそれを大事そうに一枚ずつ手に取っていた。 控え室でメイクを落とし、衣装を脱ぐと気持ちまで脱力してハァとため息をついた。 「やれやれ、やっと終わったな」 「……おつかれ」 鏡の前で赤い口紅と化粧を落とす長門を見ていると、こいつがほんとに俺の嫁さんになっちまうとはなぁなどと感慨じみたものが沸いてきた。あれれ目が潤んでる。長門の姿がぼんやりとかすんで、その隣にもうひとりの影が見えた。涙目で姿がにじんで見えていたのかそれとも本当にそこにいたのか、メガネをかけた長門だった。目をこすってよく見ようとすると、そいつは俺を見て少しだけはにかんで、スッと消えた。 長門はどうしたのという表情で首をかしげて俺を見ていた。 「……なに」 「い、いやなんでもない。古い知り合いがいたかと思ったんだが気のせいだった」 たぶん長門には分かっていたんだと思う。なにも言わなかったが、ただうなずいていた。 新川さんが自宅まで車で送ってくれるというので俺たちはホテルのロビーに降りていった。もうとっくに二次会会場に行ったかと思っていたハルヒ達がずらりと並んでいて、いやはやそこまでしなくてもいいのにバラの花びらが頭から降り注いだ。全員には無理だったが俺はそこにいる人にできるだけお礼を言った。ピエロ衣装のままの中河が笑いながら俺の手を握った。 新川さんがリムジンのドアを開けてくれ俺たちは乗り込んだ。空き缶のガラガラはもう付いていなかったが。 長門のマンションの前で車が止まった。玄関の明かりの中で新川さんに何度もお礼を言った。 「新川さん、なにからなにまでありがとうございました。機関の皆さんにもよろしくお伝えください」 「いえいえ、私どもも今日は楽しませていただきました」 「……」 別れ際に長門がなにか言いたそうにしていた。 「長門、どうしたんだ?」 長門は新川さんに近づいていきなり抱きついた。 「……お父さんを、ありがとう」 新川さんは顔を赤くして、はっはっはと笑った。 「実は私には有希さんと同じくらいの娘がいましてね。今は母親と暮らしているんですが、いい予行演習になりました。有希さん、幸せになってくださいね」 「……そうする」 里帰りがわりに新川さんに会いに行ってやろう。こいつには実家というものがなかったからな。 リムジンが走り去り、俺と長門は手をつないでマンションの玄関を入った。ひとつだけ思い出してぴたりと足を止めた。 「大事なことを忘れてた」 「……なに」 「こういうときは嫁さんを抱えて入るのが慣わしらしい」 「……そう」 長門の頬がポッと染まり、軽く手を握るようにして、俺の首にぎこちなく腕を回した。ほとんどといっていいほど体重が感じられない長門の体をお姫様抱っこで抱えてエレベータに乗った。 最初にここを訪れてからもう八年になる。あのときは寒々しい思いをしたが、今はこうやって長門の温かさを感じている。宇宙論を聞かされたり、布団で時間移動したり、缶カレーを食ったりおでんを食ったり、ここを去るたびに長門が見せていた寂しげな表情はたぶんもう見ることはないだろう。 そばにいてやりたい、難しくはないこんな単純な願いをかなえるのに長い時間をかけてしまったが、これからその時間を償っていきたいと思っている。長門よ、ずいぶんと待たせちまったな。 気がつくと七〇八号室の表札は、長門のではなく俺の名前になっていた。 足元でミャーと仔猫が鳴いて出迎えた。 「ただいま、有希」 「……おかえり、あなた」 そしてやっと、ここが俺の帰る場所になった。 END もくじに戻る